『正解のないリーダーシップ』を生きる―迷いながら進むあなたに必要な5つの問い

管理職として日々学校を支える中で、こんな悩みを抱えていませんか。
「どんな判断をしても、誰かから批判される気がする」
「正しい答えを探そうとするほど、迷いが深まる」
「“理想のリーダー像”に近づこうとするほど、自分らしさが失われていく」
リーダーシップには、教科書的な「正解」はありません。
にもかかわらず、現場では「ブレないリーダー」「強い決断力」といった理想像が求められます。
その圧力の中で、自分らしさを保つのは簡単ではありません。
わたしはこれまで、多くの管理職の先生方と関わってきました。
迷いながらも、自分の軸を見つけてチームを導く方々には、ある共通点がありました。
それは、「問い」を通して、自分の内側に耳を傾けていることです。
この記事では、「正解のないリーダーシップ」を生きるために、管理職として自分を整える5つの問いを紹介します。
迷うことを恐れず、自分の中にある“確かな声”に気づくヒントになれば嬉しいです。
1.Point:リーダーシップに“正解”はない。だからこそ、自分に問い続けることが大切。
学校管理職としてのリーダーシップには、唯一の正解はありません。
同じ判断でも、学校の文脈、教職員の状況、自分の価値観によって意味が変わります。
だからこそ、「どうすれば正しいか」よりも「自分は何を大切にしたいか」を問うことが、自分らしいリーダーシップの出発点になります。
2.Reason:正解を探すほど、迷いが深まる ― 管理職が抱える“正しさの罠”
多くの管理職が苦しむのは、「正しいリーダー像」にとらわれすぎてしまうことです。
「校長はこうあるべき」「主任は強くあるべき」といった期待や周囲の声は、
一見リーダーを導くようでいて、実は心を縛る鎖にもなります。
とくに真面目で誠実な管理職ほど、次のような葛藤に陥りやすいのです。
- すべての教員に納得してもらえる判断をしたい
- 子どもたち、保護者、教育委員会…みんなの期待に応えたい
- 自分の弱さや迷いを見せてはいけない
しかし、どんなに努力しても「みんなが納得する正解」は存在しません。
それでも正しさを求め続けると、判断が遅れたり、孤立感が強まったりします。
リーダーの本質は、すべてを知っていることではなく、迷いながらも「自分の軸」をもって決断できることです。
その軸を育てるには、「問い」を通して自分の心の声を聴く力が欠かせません。
問いは、状況を変える力をもっています。
「なぜこんなに大変なんだ」ではなく、「この経験から何を学べるだろう」と問うだけで、同じ現実がまったく違う意味をもち始めるのです。
3.Example:自分の軸を見つけるための5つの問い
以下の5つの問いは、わたしが管理職の先生へのコーチングの中で何度も活用してきたものです。
どれも「正解を出す」ためではなく、「自分を整える」ための問いです。
① 私は、どんなときに“心が動く”だろう?
怒り、悲しみ、喜び、感動。
感情が動く瞬間には、自分が大切にしている価値観が隠れています。
たとえば、「理不尽に叱られた先生を見て腹が立った」という感情の裏には、
「人を尊重したい」「誠実でありたい」という思いが潜んでいます。
感情を押さえつけるのではなく、そこにある価値を言葉にしてみましょう。
② 私は、どんな学校を“つくりたい”と思っているか?
ビジョンがないと、日々の判断がバラバラになりがちです。
「どんな雰囲気の職員室にしたいか」「子どもたちにどんな表情でいてほしいか」
そうした“空気のイメージ”を描くことが、リーダーの最初の一歩です。
抽象的でも構いません。「安心」「信頼」「笑顔」――
あなたが目指す学校の姿を、3つの言葉で表してみてください。
③ 今、私は何を“恐れている”だろう?
管理職の迷いの背景には、恐れがあることが多いです。
「対立を生むのが怖い」「批判されるのが怖い」「失敗するのが怖い」――。
その恐れを直視すると、意外にもそこに“守りたい価値”が見えてきます。
恐れは悪ではなく、価値の裏返し。
たとえば「批判されるのが怖い」という気持ちは、「信頼されたい」という願いの証です。
④ 私が“尊敬する人”はどんなリーダーだろう?
心から尊敬できる人の姿には、自分の理想が映っています。
かつての校長、同僚、あるいは家族でも構いません。
その人の「どんな行動」「どんな言葉」「どんな姿勢」に心を動かされたのか、具体的に思い出してみましょう。
他者の中に“自分らしさのヒント”が隠れていることもあります。
⑤ 今の自分に“できる小さな一歩”は何か?
リーダーとしての変化は、大きな決断ではなく、日常の小さな行動から生まれます。
たとえば、朝の挨拶のときに少しだけ目線を合わせる、職員室で「ありがとう」と一言添える――そんな小さな行動が、チームの空気を少しずつ変えていきます。
問いとは、「立ち止まる勇気」です。
忙しさに流されず、週に一度でも自分に問いを投げかけてみてください。
その積み重ねが、あなたらしいリーダーシップを形づくっていきます。
4.Point(まとめの本質と行動提案):迷いながら進む姿こそ、信頼されるリーダーの証
完璧を目指すのではなく、迷いを抱えながらも誠実に問い続ける姿こそ、周囲に信頼を生むリーダーの姿です。
「正解を出すリーダー」ではなく、「問いをもって歩むリーダー」であること。
その姿勢が、職員にも“考える力”を育てます。
まずは今日、次のひとことを自分に問いかけてみてください。
「私は今、何を大切にしたくて、この選択をしようとしているのだろう?」
その問いが、迷いを希望に変える最初の一歩になります。
まとめ:問いが、あなたのリーダーシップを育てる
リーダーとは、答えを持つ人ではなく、問いを持ち続ける人です。
正解のない時代だからこそ、自分の内側にある声を聴く力が求められます。
今回紹介した5つの問いは、忙しい日々の中でも心を整える道具になります。
どんなに迷っても、あなたが“自分らしく”いようとする姿勢が、周囲に安心と信頼を与えます。
リーダーとしての迷いを、成長の証として受けとめてください。


