チーム学校のためには「役割分担」より「役割理解」が鍵

「どうして先生方のチームがうまくまとまらないのだろう」と感じたことはありませんか。

  • 役割を分担したのに誰かに負担が集中してしまう
  • 「あの人は何もしていない」という不満が噴き出す
  • お互いのやり方や価値観がかみ合わず摩擦が起きる

そんなとき、単に“分担”を見直すだけでは根本的な解決になりません。背景には「役割の理解」が不足していることが多いのです。
役割理解とは、自分の仕事をこなすだけでなく、他の人がどんな目的で何を担っているかを知り、全体像の中での意味を理解することを指します。

わたしは長年、学校現場と関わってきました。その中で実感するのは、役割理解が深まるとチームがスムーズに動き始めるということです。
立場や経験が違っても「互いに補い合っている」という感覚が生まれるからです。

この記事では、単なる分担ではなく「役割理解」を通じてチームをまとめる視点をお伝えします。
役割を理解し合うことが、先生方自身の安心感と協働の力につながります。
少しの工夫で空気は変えられます。一緒に考えてみましょう。

1.Point:チームづくりは「役割分担」より「役割理解」

学校でチームをまとめるときに必要なのは、役割をただ分担することではなく、互いの役割を理解し合うことです。

役割分担だけでは「私はここまでやった」「あの人はやっていない」と不満が生まれがちです。

しかし役割理解があると、「自分の仕事は全体の中でどうつながっているのか」「仲間が果たしている役割は何なのか」が見えてきます。

その結果、単なる線引きではなく、協働の意識が生まれます。

先生方が安心して協力し合うためには、分担より理解を大切にする視点が欠かせません。

2.Reason:なぜ「役割理解」が必要なのか

学校は多様な専門性と経験を持つ先生方の集合体です。
年齢も世代も異なれば、教科、校務、部活動といった担当の幅も広い。

こうした多様性は強みになる一方で、摩擦の火種にもなります。
役割分担だけに頼ると、次のような問題が起こりやすいのです。

  • 不公平感の増大
    「自分ばかりが忙しい」「あの人は負担が少ない」と感じることで不満が募り、信頼が損なわれます。
  • 協力の消失
    「これは自分の仕事ではない」と線引きが強くなり、助け合いが起こらなくなります。
    結果、業務が属人化し、突発的な事態に対応できなくなります。
  • 摩擦の固定化
    相手の意図や背景を理解しないまま、「なぜ動かないのか」「なぜ任せられないのか」と疑心暗鬼が広がり、人間関係の溝が深まります。

このような状態では、学校が求める「チームとしての力」は発揮されません。

大切なのは「お互いの役割を理解する」というステップを踏むことです。
理解とは、単に仕事内容を知るだけではありません。
「なぜその役割が必要なのか」「どんな価値をもたらすのか」を共有することです。

たとえば学年団であれば、学級担任・副担任・学年主任それぞれが担う役割には異なる意味があります。
学級担任は日常的な生徒理解を深め、副担任は柔軟なサポートを行い、主任は全体をつなぐハブになる。
これを互いに理解していれば、仕事の境界線ではなく、協力の接点が見えてきます。

また、「役割認知の共有度」が高いチームほどストレスが低く、業務の効率も高いです。

つまり役割理解は、単に仲良くするためではなく、学校組織の生産性を上げるうえで不可欠なのです。

3.Example:役割理解を深める具体的な方法

では、実際に役割理解を育てるにはどうすればよいのでしょうか。
現場で多くの先生方が試み、成果を上げた方法を紹介します。

(1) 「役割マップ」をつくる

学年やプロジェクトのメンバーで、自分の役割を一言で表し、紙やホワイトボードに書き出します。

  • 学年主任:「全体の方針を決め、調整役になる」
  • 学級担任:「日々の生徒理解と家庭とのつながり」
  • 副担任:「担任を支えつつ、生徒に寄り添う立場」
  • 教科担当:「専門的な学びを保障し、生徒の強みを伸ばす」

書き出して共有すると「この人がいるから成り立っている」という実感が得られます。

(2) 「影の役割」を見える化する

先生方が実際に行っていることは、分掌や時間割に書かれていないことが多くあります。

たとえば、昼休みに自然と生徒の相談を受けている人、困っている同僚に声をかけている人。
これらは“影の役割”ですが、チームにとって大きな力です。
話し合いの場で「見えない役割」も紹介し合うと、互いの存在が尊重されやすくなります。

(3) 「他者紹介ワーク」を取り入れる

会議や学年ミーティングで、時々「〇〇先生が普段どんな役割を担っているかを一言で紹介してください」とお互いに紹介し合う場を持つとよいです。
自分では気づかない貢献を他者が見つけてくれることで、自己肯定感も高まります。

(4) 成功体験を「誰のおかげ」で振り返る

「学級行事がうまくいった」「保護者対応が落ち着いた」といった出来事を、単に結果として語るのではなく「誰の役割がどのように貢献したか」を振り返ります。
たとえば「副担任が保護者と連絡を取ってくれたおかげで、全体が落ち着いた」と言語化することで、役割理解が具体化されます。

(5) リーダーが“橋渡し”を意識する

主任や管理職の先生は、メンバー間の役割理解を促すファシリテーターの役割を担うことができます。
「A先生の工夫がB先生の活動を支えている」という関係性を言葉にして示すと、チーム内で補い合う空気が生まれます。
ある中学校の学年団では、最初は「仕事の分担が不公平だ」という不満が続出していました。
しかし「役割マップ」で役割を可視化し、伝えるとともにと「他者紹介ワーク」を数回行ったことで、雰囲気が変わりったそうです。
「あの人が見えないところで頑張っている」と認め合えるようになり、互いに助け合う姿が増えていったのです。

4.Point:役割を理解し合うことが協働を生む

教職員をチームとしてまとめるとき、分担にこだわるだけでは不満や摩擦が増える一方です。
大切なのは「自分と仲間の役割をどう理解するか」という視点です。

役割理解があることで、不公平感は減り、助け合いが自然に生まれます。
会議や日常の場面で少し工夫するだけで、お互いの働きが見える化され、協働の空気が育ちます。
先生方一人ひとりが安心して働けることが、結果的に子どもたちの学びにもつながります。

今日から「役割を理解し合う」ことを意識してみてはいかがでしょうか。

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