毎日18時までには帰るための“引き算”仕事術

  • 「こんなに働いているのに、なぜか報われない」
  • 「家に帰ってからも教材研究が終わらない」
  • 「毎日19時、20時まで残って、何のための仕事なんだろう……」

そんな気持ち、抱えたことはありませんか?

わたしも現場にいたころ、心身が疲れ果てて“空っぽ”のまま帰宅する日が続いたことがあります。
教師の仕事は尊く、やりがいもありますが、いつしか「終わらせること」ばかりが目標になってしまう。
それは、本当に大切な教育の喜びをすり減らすことにもつながります。

今日は、「毎日18時に帰る」を実現する“引き算”の仕事術をご紹介します。
単に業務を減らすのではありません。
「やめる」「手放す」ことで、教師としての時間を再定義し、本来のやりがいを取り戻す方法をお伝えします。

ムダをそぎ落とした先に見えてくる、“教師としての誇り”。
そんな働き方を、一緒に考えてみませんか?

Point:早く帰るためには“足す”より“引く”発想が必要です

教師が定時で帰るためには、「もっと頑張る」「効率を上げる」よりも、「引く」「減らす」「やめる」という逆転の発想が必要です。
あれもこれもやらなければ、と抱え込んでしまうほど、時間もエネルギーもすり減っていきます。

「手を抜く」のではなく、「手放す」勇気を持つこと。
何を大切にして、何を手放すか。
それを見極めることが、実は仕事の質を高め、教師としてのやりがいや充実感を取り戻す近道になるのです。

今日ご紹介するのは、単なる時短テクニックではありません。
「早く帰れる働き方」=「自分の時間も、教師としての使命感も大切にできる働き方」。

それを“引き算”というキーワードで、一緒に考えてみましょう。

Reason:「全部やろうとする」ことが、やりがいをすり減らす

「教師の仕事は終わらない」——この言葉は、現場で働く多くの先生方にとって、もはや合言葉のようになっています。

授業準備、学級経営、行事、会議、保護者対応…。
それに加えて、ICT対応、委員会、校務分掌、突然のトラブル対応。
日々、目の前の“やるべきこと”に追われ続ける毎日では、やりがいどころか、呼吸する余裕すらなくなってしまいます。

実は、私自身もかつて「定時で帰るなんて無理だ」と思い込んでいた一人です。
「子どものためだから」「みんな忙しいから自分も頑張らないと」
そんな気持ちが、いつのまにか“抱え込む働き方”を強化していました。

なんとなく調子悪いと思って、病院に行ったら、そのまま2週間入院することになりました。
十二指腸潰瘍で、しかも重症化していたそうです。

お見舞いに来た同僚にこう言われました。
「ケイ先生、仕事、抱え込みすぎじゃない。全部やらないといけないの?」
——はっとしました。
自分で勝手に「必要だ」と思い込んで、優先順位をつけることもせず、ただただ目の前のことをこなしていました。
気がつけば、「自分がやらなければ」と思い込む働き方に、どっぷり浸かっていたのです。

引き算の発想が必要な理由は、3つあります。

1. キャパシティには限界がある

人の時間も体力も、無限ではありません。
どんなに意欲があっても、どんなに経験を積んでも、やれることには限りがあります。
「がんばり屋」の先生ほど、自分のキャパを越えて動き続け、結果的に心身をすり減らしてしまうのです。

2. “やりがい”を感じる余白がなくなる

常に時間に追われていると、「うまくいった!」「この瞬間に立ち会えてよかった!」といった仕事の喜びを味わう余裕が奪われてしまいます。
本来、教師として最も大切にしたい部分を味わう前に、次のタスクに追われる……。
それが積もると、燃え尽き症候群や自己効力感の低下にもつながります。

3. 教師の仕事は“全部”やっても終わらない

教師の仕事は「終わらせる」ことが目的ではありません。
日々の営みの中で、何を大事にして、どう時間を使っていくか。
その見極めこそが、実は教師の専門性の一部なのです。

だからこそ、「何をやめるか」「何をやらないか」を見極める力が必要です。
それは“怠け”ではなく、“選択”の力です。

引き算の仕事術は、「自分にしかできない仕事に集中する」ための土台です。
手放すことでしか、やりがいは戻ってこない。
それが、わたし自身が現場で実感してきた一つの真実です。

Example:引き算で“早く帰れる教師”になる5つの習慣

「引き算」と聞くと、「何かをやめなければならない」「大事なことまで削られるのでは」と不安に感じるかもしれません。
でも大丈夫です。ここでご紹介するのは、無理に頑張るのではなく、“今よりちょっと身軽になる工夫”です。

現場の先生方に実際にお伝えして効果があった、「やめる」「減らす」「委ねる」習慣を5つご紹介します。

1. 「一人でやる前提」をやめる
  →「相談」や「お願い」を、業務の一部に組み込む

「忙しそうだから頼みにくい」
「自分の方が早く終わるからやってしまおう」
そんな優しさが、自分を追い込んでしまうことがあります。

わたしが出会ったあるベテランの先生は、こう言っていました。
「“お願いできる力”も教師の力だよ」

放課後に数人で教材の印刷を分担したり、行事の準備で「これお願いできますか?」と自然に声をかけ合ったりする。
ほんの一言で、作業時間は半分になり、関係もよくなる。
“相談すること”を、仕事の一部にしてしまうのです。

2. 「全部返す」をやめる
  →宿題やノートの“部分返却”に切り替える

「子どものために全部にコメントしたい」——その気持ちはとても尊いものです。
でも、毎日全員分を確認してコメントを書き続けていくことは、どこかで限界がきます。

一つの提案は、「今日は3割だけ返す」と決めて、重点的に見たい子を選ぶ方法です。
たとえば:

  • 全体の傾向を見る日は全体ざっくり確認だけ
  • 深く書いてほしい日は、2〜3人に丁寧なコメント
  • 週に一度だけ全員に返す

“全員にいつも同じように返す”から、“目的をもって返す”へ。
これだけで、30分〜1時間の差が生まれます。

3. 「朝は資料づくり」から脱却する
  →“最初の15分”を「整える時間」に使う

出勤してすぐPCに向かい、資料づくりや出力作業を始める先生は多いです。
でも、朝の貴重な集中タイムを、ルーチン作業で消耗してしまうのはもったいない。

おすすめは、「机の上を整える」「予定を整理する」「子どもの名前を10人思い浮かべる」といった、頭と心の準備時間にあてること。
これにより、その後の仕事の回転が驚くほどスムーズになります。
焦って動き出すより、意図をもって動き出す。
その15分が、午後1時間分の差になります。

4. 「指導=完了」ではなく「問いかけ=促進」と捉える
  →“背負う”より“引き出す”指導へ

トラブルや悩みに対して、全てを解決しようとする必要はありません。
大切なのは、子どもや同僚が自分で考えられるような問いかけを投げること。

  • 「どうしてそう思ったの?」
  • 「次はどうしたいと思ってる?」
  • 「もし◯◯だったら、どんな選択肢があるかな?」

こうした問いかけは、相手の成長を促すだけでなく、こちらのエネルギー消耗も抑えます。
背負いすぎず、導きすぎず。
“対話”が時間を生み出します。

5. 「帰る時間」を“設定しておく”
  →ゴールがあるから、そこに向かって動ける

「今日は18時までに帰る」と朝の時点で決めておく。
それだけで、不思議と時間の使い方に意識が向きます。

終わらない仕事があっても、「明日でいいこと」「やらなくていいこと」が見えてくる。
“無限に時間がある”と思っていると、無限に時間を使ってしまうからです。

ゴールが決まっているから、優先順位が自然と立つ。
それが“早く帰る教師”に共通する習慣です。

こうして見ると、「やらない」ことを決めるのは、決してマイナスではないことがわかります。
むしろ、本当に必要なことに集中できるようになる。
そして、それが教師としてのやりがいを守ることにもつながっていくのです。

Point:やめる勇気が、やりがいを守る

教師という仕事は、やろうと思えば無限にできます。
でも、「全部やる」ことが、やりがいを奪ってしまうこともある。
だからこそ、引き算が必要なのです。

今日ご紹介した5つの習慣は、どれも「手を抜く」のではなく、「手放すことで力を注ぐ場所を見極める」ための方法でした。

  • 一人でやるのをやめて、相談する
  • すべて返すのをやめて、目的をもって返す
  • 朝の15分で頭と心を整える
  • 全部指導するのではなく、問いかけて促す
  • 帰る時間を先に決めて、逆算して動く

これらは、決して「楽をする」ためではありません。
自分を守り、子どもと丁寧に関わる余白を取り戻すための選択です。

忙しさの中に埋もれそうな毎日だからこそ、「引き算」という視点で、自分の働き方を一度見直してみてください。
そして、教師としての誇りや喜びを、もう一度しっかりと手にしてほしいと思います。

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