管理職としてこの先どうすれば?管理職の今後のキャリア

- 教頭・校長になったものの、これからどんなキャリアを築けばいいのか見えてこない
- 人生100年時代。仕事だけでなく、家庭でも大きな転機を迎える年代。残りの教員人生、何を目指して働くべき?
- 学校経営にやりがいはあるが、マンネリ感や閉塞感もある
そんな思いを抱えていませんか?
この年代になると、子どもの独り立ちや進学・就職、親の介護など、家庭でも人生の節目を迎える時期です。仕事に加えてプライベートの役割も大きくなり、「このままでいいのか」「自分の人生をどう生きたいのか」といった問いが、改めて胸に迫ってくることもあるでしょう。
実は、多くの学校管理職が「なった後のキャリア設計」で迷っています。制度上の“頂点”である校長に就いても、その後の展望が見えず、特に50代以降では「自分は何を残したいのか」と悩む声が多く寄せられます。
私は、これまで教育関係者へのカウンセリングやコーチングを通じて、多くの管理職の葛藤と再出発を見届けてきました。この記事では、管理職になったからこそ考えるべき「キャリアの第2章」の描き方を、人生全体の視点も交えてお伝えします。
管理職になった今こそ、“これからのキャリア”を描き直す時です
教頭・校長としての仕事に慣れ始めた頃、多くの方がふと立ち止まって考えます。
「このまま定年まで“維持”でいいのだろうか」
「今の自分にしかできない仕事って何だろう」
「あと10年、どう働けば後悔しないだろうか」
そう思う背景には、仕事だけでなく、家庭や人生全体の変化があります。子どもが進学・就職・結婚などを経て巣立ち、自分の役割が少しずつ変わってくる一方で、今度は親の介護が本格化するなど、「これまで通りではいられない」実感を抱く人も少なくありません。
「もうひと頑張り」だけでは心がついていかない。そんな時期にこそ、自分のキャリアをただ“続ける”だけでなく、“再定義”することが重要なのです。
なぜなら、管理職のキャリアは「立場」から「影響力」へと進化させるものだからです
教頭・校長になるまでの道のりは、「任命されるかどうか」「試験に通るかどうか」が明確な基準として存在します。
しかし、なった後は違います。
どんな校長になりたいのか。
何を後輩に残すのか。
どんな変化を学校にもたらすのか。
そうした“内面的な成長”や“教育的影響力”こそが、管理職の第2フェーズです。
ところが、多くの現場ではこの「キャリアの第2章」について語られることはほとんどありません。校長になったらゴール、という空気すらあります。しかしそれは「制度の終点」であり、「キャリアの終点」ではありません。
定年後に教育委員会で再任用される人もいれば、大学講師や地域教育アドバイザーとして活躍する人もいます。その一方で、「自分のやってきたことは何だったんだろう」と虚無感を抱えて退職する人もいます。
違いを生み出すのは、「なった後に、何を考え、何を行動したか」です。
管理職キャリアを広げた3人の実例
◯事例①:校長職を“教育改革の実験場”にしたDさん(公立中学校・55歳)
Dさんは教頭から校長に昇進後、学校全体を「学び直しの場」と再定義。地域と連携したプロジェクトベース学習、ICTを活用した異学年協働授業、定期試験の廃止など、大胆な改革に挑戦。
外部との関係づくりにも力を入れ、メディアにも取り上げられるようになりました。
彼は言います。「校長って、変革を起こすには最高のポジション。やらない理由がなかった」と。
→ポイント:校長の裁量を“未来づくり”に使う視点。
◯事例②:若手育成に情熱を注ぐEさん(小学校教頭・52歳)
Eさんは教頭としての役割を“若手教員の育成リーダー”と位置付け、校内にメンター制度を導入。失敗談を率先して共有する姿勢が若手の信頼を得て、学校の風通しが改善。
「校長にはまだならなくてもいい。今の立場で、下の世代の育成をやり切りたい」と語ります。
→ポイント:「今の役職」で果たすべき使命を深める方向性。
◯事例③:定年前に“社会教育へ転身”したFさん(高校校長・60歳)
Fさんは58歳で校長に就任。その時点で「あと数年で退職」という年齢的なリミットがありました。彼は早期から“セカンドキャリア”の準備を始め、地域の教育委員やNPO活動に並行して関わっていました。
退職後は地域の子育て支援団体で理事に就任し、「学校を出ても教育者」としての生き方を実践しています。
→ポイント:任期を見据えた“出口設計”を早期に描いた好例。
管理職としてのキャリアを進化させるための3つの視点
では、あなた自身が「この先どうすればいいのか」と悩んだとき、どんな軸で考えればよいのでしょうか。以下の3つの視点が、キャリアの再設計に大いに役立ちます。
① 「教育的影響力」をどこに向けるかを考える
校長や教頭という肩書きは“権限”ではありますが、それ以上に重要なのは“影響力”です。
- 若手育成に向けるのか
- 教育改革に向けるのか
- 地域連携に向けるのか
- 組織風土の改善に向けるのか
「自分の立場を、何のために使いたいのか?」という問いが、キャリアの推進力になります。
② 5年後・10年後の「ありたい姿」から逆算する
- 5年後に、自分は何をやっていたいか?
- 退職するとき、どんなことを「やり切った」と思いたいか?
- 教職を終えた後、何をしていたいか?
この問いに真剣に向き合えば、「今すべきこと」は自然と見えてきます。
「残された年数をどう過ごすか」ではなく、「どんなラストを描きたいか」から逆算する。これが、管理職として後悔しない働き方をつくる秘訣です。
③ 現場と自分の「マンネリ感」にあえて挑戦する
年齢を重ね、家庭でも新たな役割を担いながら仕事を続ける中で、「自分だけが取り残されているような感覚」にとらわれることもあります。管理職という重責に慣れてきた今だからこそ、仕事に新たな刺激や意味を見いだすことが求められます。
校長・教頭として一定期間務めていると、学校の業務にも自分のパターンができてきます。そこに“マンネリ感”が生まれがちです。
- 新たな校務分掌の再編
- 自校の課題に合わせたオリジナル研修
- 外部講師を招いた保護者会の刷新
- 生徒との関係を取り戻す時間づくり
小さな一歩でいいので、“今までやってこなかったこと”に挑戦することが、再び「働く意味」を見つけるきっかけになります。
【まとめ:管理職のキャリアに「終点」はない。次のステージは自分で描く】
管理職に就いた瞬間、「これでもうキャリアの階段は終わった」と感じてしまう方もいます。
けれど実際には、そこからが「本当の意味での教育者人生の再構築」の始まりです。
- 自分は何を残すのか
- どんな影響を与えたいのか
- どういう背中を見せて退くのか
こうした問いに向き合い、「今、自分にできること」を着実に行動に移すことで、キャリアは再び輝きを持ち始めます。
あなたのこれからの10年が、次世代の学校文化に深い影響を与える。
そしてその10年は、家庭人・地域人としての「人生の質」にも直結していく時間です。
その責任と希望を、どうか“自分らしい形”で引き受けてください。