学年団の目標が伝わらない理由――“共有”ではなく“共感”が足りない

こんなこと、感じたことはありませんか?
・学年団の目標を立てたのに、誰もその話をしなくなった
・会議ではうなずいていたのに、実際の行動に結びつかない
・そもそも先生方の考え方がバラバラで、まとまる気配がない
もしかしたら、あなたも今、そんなモヤモヤを抱えているかもしれません。
わたしも長年、学校現場で「チームで目標を共有する難しさ」と向き合ってきました。
特に近年は、先生方の価値観が本当に多様です。
「子どもファースト」も「働き方のバランス」も「自分の信念」も、どれも大切にしたい。
でもそのぶん、「目標を一つに定めること」が逆にストレスになることもあります。
今日は、そんな時代だからこそ大切にしたい「共感から始まる目標設定」についてお話しします。
一人ひとりの価値観の違いを尊重しながら、チームで向かう方向を自然にそろえるヒント。
目標を“伝える”のではなく、“感じてもらう”という視点が、きっと役に立つはずです。
一緒に考えてみましょう。
1.Point:目標は「共有」よりも「共感」から始まる
学年団の目標を掲げても、なかなか先生方に浸透しない――そんな悩みを抱えていませんか。
その原因の多くは、「伝え方」よりも「感じ方」にあるのかもしれません。
いま、学校現場では先生方の価値観が多様化し、同じ目標を一律に受け入れてもらうことが難しくなっています。
一人ひとりがそれぞれに大切にしている想いや優先事項を持っているからこそ、
ただ「目標を伝える」「共有する」だけでは、人の心は動かなくなっているのです。
これからの時代、必要なのは“共感”です。
自分ごととして「わかる」「やってみたい」と思える実感があってこそ、目標は日常に息づいていきます。
つまり、浸透とは“納得”の積み重ねなのです。
2.Reason:なぜ、今の時代には「共感」が求められるのか?
かつての学校現場では、「目標を立てれば、それに向かって皆で努力する」という前提がある程度機能していました。
「児童生徒のために頑張る」という価値観に、ある種の共通認識があったのです。
けれど今、その前提は大きく変わっています。
働き方改革、ライフスタイルの多様化、教育観の個別化――
こうした変化の中で、先生方一人ひとりが抱く“仕事の意味”や“教育の価値”も多様化しています。
たとえば…
- 「プライベートとのバランスを優先したい」
- 「子どもとの対話を何より大切にしたい」
- 「学力向上よりも情緒支援に軸足を置きたい」
どれも、その人なりの誠実な想いです。
しかしそれらがチーム内で共有されないまま目標だけが掲げられると、
「この目標は、誰のため?」「なぜ、これが大切なの?」と感じてしまうのです。
また、校内の風通しや人間関係の影響も無視できません。
発言しにくい空気や、上意下達で進められる会議では、
たとえ正論であっても人は心を閉ざしてしまいます。
つまり、「目標が伝わらない」のではなく、「目標の背景にある意味が響いていない」のです。
共有とは、“情報”を渡すこと。
共感とは、“気持ち”をつなぐこと。
この違いが、目標の浸透力を決定づけているのです。
3.Example:共感を育むための工夫と実践事例
では、どうすれば「共感される目標」になるのでしょうか。
ここでは、わたしが関わってきた先生方の実践から、いくつかヒントをご紹介します。
① 目標を「問い」に変えてみる
ある中学校では、「生徒の自己肯定感を高める」という目標を掲げようとしたところ、
ある先生が「でも、わたしたちはどう関わればいいの?」とぽつり。
そこで、目標をそのまま掲げるのではなく、次のような問いに変えてみたそうです:
「この1年間で、生徒が『自分を大切にできる』瞬間をどう増やすか?」
すると、それぞれの先生が「教科指導で自信を育てる」「一言メモで気持ちを伝える」など、
自分なりの関わり方を持ち寄るようになりました。
「問い」として提示することで、目標が“自分たちのもの”になったのです。
② 「言葉づくり」に先生方を巻き込む
目標の言語化に、メンバー全員を巻き込んだある小学校のケースも印象的でした。
最初は「目標なんてどうせお題目でしょ」といった空気感があったそうです。
しかし、リーダーが「ことばって、わたしたちの背中を押してくれるものになりませんか?」と提案し、
短い“合言葉”を皆で考えるワークショップを実施。
その結果生まれたのが、「ひと声が、心の灯りになる」というフレーズ。
この言葉は、目標でありながら、先生方の日常に寄り添うものでした。
「朝の一言」「帰りの声かけ」など、小さな行動が変わり、
子どもたちへの関わりにも少しずつ温かさが増していきました。
③ 「まず聴く」から始める目標会議
別の高校では、学年団で目標を話し合う前に、
「最近、生徒とどんな瞬間にうれしかったか」「悩んだことは何か」を共有する時間を取ったそうです。
価値観がバラバラだからこそ、まずは“感じていること”を知り合うことが大事。
話すうちに、「うん、わかる」「実は自分も…」と共感の空気が育っていき、
そこから自然に「それなら、こんなことを大事にしたい」という言葉が出てきました。
目標設定は、価値観の押しつけ合いではなく、“大事にしたい気持ち”のすり合わせなのだと思います。
4.Point:チームの中で目標が生きるために、あなたができること
多様な価値観が当たり前になったいま、目標は一律に「伝えるもの」ではなくなりました。
むしろ、「一人ひとりが自分の言葉で語れる」ようにすることが、浸透の第一歩です。
リーダーのあなたが、すべてを説明し、導く必要はありません。
「この目標、みなさんにとってはどうですか?」
「どんな場面でこの目標を思い出せるといいでしょうか?」
そんな問いを投げかけるだけで、チームは少しずつ動き始めます。
目標は、“決めたあと”が勝負。
会議後の日常で、どんなふうに扱われるかが、チームの空気を決めるのです。
まとめ:目標は「響いてこそ、目標になる」
- 多様な価値観の中で目標を浸透させるには、“共感”が鍵
- 背景や想いが共有されない目標は、心に届かない
- 問いを立てる・言葉を共につくる・まず想いを聴く
- 小さな工夫で「目標が生きる」チームづくりは始められる
あなたの学年団でも、今日の会話から少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
わたしも、そんな現場の積み重ねこそが、子どもたちの明日を変えていく力になると信じています。