管理職の先生にできる“元気がない教員”へのサポート

職員室を見渡すと、「あの先生、最近少し元気がないようだ」と気づくことはありませんか。

管理職という立場にいると、そうした小さな変化に敏感になります。
しかし、実際にどう声をかけたらよいのか、あるいはどこまで関わってよいのか迷う方も多いでしょう。
下手に踏み込みすぎると「監視されている」と感じさせてしまう危険がありますし、逆に見過ごしてしまうと「気づいてもらえない」と孤立感を深めてしまいます。

わたしはこれまで多くの先生方から相談を受けてきました。
「先生を守りたいが、どう声をかけたらいいか分からない」という声を本当によく耳にします。
その裏には、「管理職として責任を果たしたい」「けれども余計に追い込んでしまうのは避けたい」という葛藤があります。

この記事では、管理職だからこそできる「元気がない先生へのさりげないサポートの3つのステップ」をご紹介します。
心理学やコーチングの視点をもとに、相手の尊厳を大切にしながら、学校全体の安心感を育てる具体策をお伝えします。

管理職の先生方がこの記事を読むことで、すぐに実践できる関わり方のイメージが持てるはずです。
明日からの一歩が、先生方の心の支えになり、学校全体の空気を変えていきます。

1．Point：組織の中に「安心の土壌」を

管理職が元気をなくしている先生に接するときは、「問題解決を迫る」のではなく、「安心して話せる場をつくること」に焦点を当てることが大切です。

立場上、つい成果や業務の遂行に意識が向きがちですが、先生方にとって何よりも力になるのは「見守ってくれる存在がいる」という安心感です。

管理職だからこそできるのは、学校という組織の中に「安心の土壌」を広げることなのです。

2．Reason：なぜ管理職に寄り添いが求められるのか

管理職の立場で元気のない先生を前にすると、いくつかの背景が考えられます。

• 過重な業務負担：授業、部活動、保護者対応、学校行事に加え、校務分掌でリーダー的役割を担うケース。
• 人間関係のストレス：学年団内の不和、保護者とのトラブル、児童生徒との葛藤。
• 自己効力感の低下：「自分はうまくできていないのではないか」という自信喪失。
• プライベートの問題：家庭内の不安、体調不良、経済的な悩みなど。

こうした要因が絡み合うと、先生は急に表情が硬くなったり、沈黙が増えたりします。
管理職は職員室を俯瞰する立場にあるため、こうした小さな変化をいち早く察知できます。

しかし、「声をかける＝評価や監督」と受け取られやすいのもまた事実です。
ここに難しさがあります。

心理学的に見ても、リーダーからの関わりは「支え」と「圧力」の両面を持ちます。
だからこそ、意識的に「支え」としてのメッセージを届ける必要があるのです。

アドラー心理学でも、人が困難を乗り越えるときに必要なのは「勇気づけ」だとされています。
勇気づけとは「あなたには力がある」「あなたは仲間だ」と伝えること。
これは管理職だからこそ強い効果を持つ関わりです。

3．Example：管理職ができる寄り添いの3つのステップ

ステップ1：観察と気づきの言語化

「最近、ちょっと疲れているように見えるけれど、無理していないかな」
管理職がこうした声をかけるとき、評価ではなく「気づき」を言葉にすることが大切です。
「授業準備が遅れているようだが、どうなっている？」と問い詰めるのではなく、「顔色が心配なんだ」と人としての関心を示すことが第一歩です。
ある校長先生は、朝の挨拶のときに「おはよう。昨日は遅くまで残っていたね、大丈夫？」と一言添えるようにしていました。
先生たちは「見てくれている」と感じ、安心感を持てたと話していました。

ステップ2：安全な相談の場を確保する

元気がない先生にとって大切なのは「安心して本音を話せる場」です。
職員室では人目が気になるため、放課後に校長室や会議室で「ちょっと話していかない？」と声をかけるだけで状況は変わります。
わたしが関わったある副校長先生は、毎週1回「気軽なお茶会」と称して先生方と個別に話す時間を持っていました。
形式ばらない場があったことで、「実は今、子どもとの関わりで悩んでいて……」と打ち明けられることが増えたそうです。

ステップ3：小さな承認と勇気づけを積み重ねる

管理職の「ありがとう」「助かっているよ」という言葉は、思っている以上に先生の心を支えます。
ある若手の先生は「副校長先生に“君が学年にいるだけで安心だ”と言われて涙が出そうになった」と語っていました。
業務の指導や改善は必要ですが、それ以上に日常的な承認の積み重ねが先生の回復力を育てます。
また、失敗した先生に対しても「挑戦したこと自体が大事だよ」と言葉をかけることで、再び立ち上がる力を取り戻すのです。