春と秋に“なんとなくしんどい”あなたへ──季節と心のリズムを読み解く心理学

春や秋になると、理由もなく気分が落ち込んだり、疲れが抜けにくくなったりすることはありませんか。
・朝、布団から出るのがつらい
・子どもたちに笑顔で接する余裕がない
・なぜか焦りや不安が増してしまう
そんな“なんとなくしんどい”感覚に戸惑う先生は、決して少なくありません。

実は、季節の変わり目は心にも影響を与える時期です。
気温や気圧の変化に体がついていかず、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
日照時間が変化することで、睡眠や気分を整えるホルモンの働きにも揺らぎが生じます。
つまり、「季節のせいで心が揺れる」のは自然な反応なのです。

毎年、春や秋になると「最近なんだか調子が出ないんです」と話す先生が増えます。
まじめで責任感の強い先生ほど、「気持ちの切り替えができない自分」を責めてしまうように感じます。

この記事では、「なぜ季節の変わり目に心が揺れるのか」、そして「どうすればその波をやさしく乗り越えられるのか」を、心理学の知見と先生方の実例をもとにお伝えします。
少し肩の力を抜いて、「あ、こういうことかもしれない」と思えるヒントを、一緒に探していきましょう。

1. Point:春や秋に心が揺れるのは「自然なこと」

春や秋に気分が落ち込んだり、理由もなく疲れを感じたりするのは、特別なことではありません。
それは、あなたの心が弱いからでも、気持ちの切り替えが下手だからでもありません。

人の心と体は、季節のリズムと深くつながっています。
春は環境や気温の変化が激しく、秋は日照時間が短くなり、心のエネルギーが内向きになります。
その波に自然と影響を受ける――これは生理学的にも、心理学的にも「正常な反応」です。

「最近、なんだか調子が出ないな」と感じたら、まずは“自分のせいにしない”こと。
それだけでも、心の負担は少し軽くなるはずです。

2. Reason:季節の変わり目が心に影響を与える理由

なぜ春や秋になると、心が揺れやすくなるのでしょうか。
理由はいくつかありますが、心理学や生理学の視点から見ると、主に次の3つが挙げられます。

自律神経のバランスが乱れやすい

春や秋は、寒暖差が大きく、気圧も変化しやすい季節です。
この変化に体が対応しようとすると、体温調整や血圧調整を担う自律神経が休む暇を失います。
その結果、心拍や睡眠リズムが乱れ、イライラや不安、集中力の低下といった心理的な不調が出やすくなります。

日照時間の変化がホルモンに影響する

日照時間が短くなる秋には、脳内のセロトニン(幸福ホルモン)が減少しやすくなります。
春もまた、冬の間に崩れた体内時計をリセットしようとする過程で、気分の波が大きくなることがあります。
つまり「春は心が外向きに揺れ、秋は内向きに沈みやすい」という傾向が見られるのです。

環境変化のストレスが重なる

春は新年度や人事異動、秋は学期の折り返しや成果評価の時期です。
環境が変わり、関係性や責任の重さが変わる。
「新しいことに慣れなきゃ」と気を張る春と、「ここまでやってきたけど大丈夫だろうか」と振り返る秋。
心にかかるプレッシャーの方向は違っても、どちらもストレス反応を引き起こしやすい季節です。

つまり、季節の変化とは、体・心・環境の“三重の変化”
これが重なることで、わたしたちは“なんとなくしんどい”という状態に陥りやすくなります。

3. Example:現場の先生方に見られるケースと対処法

ケース①:「やる気が出ない自分が嫌になる」

ある若手の先生は、春先になると「授業に気持ちが乗らない」「自分が怠けているようで情けない」と話していました。
実際には、異動で環境が変わり、緊張が続いていた時期。
体はフル稼働していても、心が追いつけていなかったのです。
その先生にこう伝えました。
「やる気が出ないときは、回復のサインでもあります。少しペースを落としても大丈夫です。」
彼は“頑張れない自分”を責めるのをやめ、放課後に10分だけ外を歩くようにしました。
1週間後、「空を見上げる余裕が戻ってきた」と笑顔で話してくれました。

ケース②:「秋になると気持ちが沈む」

あるベテランの先生は、秋になると「生徒に厳しくあたってしまう」「自分が嫌になる」と感じるそうです。
その背景には、学期後半の疲労と、日照時間の減少による体内リズムの乱れがありました。
「夕方に10分だけ窓辺で過ごす」「照明を少し明るくする」など、光の取り入れ方を変えるだけでも気分は安定しやすくなります。
心理学でも“光環境”は気分の安定に重要とされています。

ケース③:「管理職としての重圧に押しつぶされそう」

秋の教育現場では、校務の整理や進路対応、評価などで管理職が最も忙しい時期です。
ある校長先生は「責任の重さに眠れない」と話していました。
その方に提案したのは、「週に一度、何もしない時間を“意図的に”つくる」こと。
人は、“休んでいい”と自分に許可を出すだけで、緊張状態が和らぐものです。
心の余白は、次の日の判断力や温かい言葉の源になります。

4. Point:自分を責めずに、季節の波と付き合う

春や秋に気持ちが揺れるのは、自然な現象です。
私たちは自然の中で生きており、気候のリズムと切り離されて生きることはできません。

大切なのは、「波を感じたら、自分を責めず、立ち止まる」こと。
ほんの少しの意識で、心の状態は変わります。

  • 朝の光を浴びる
  • 仕事の合間に深呼吸をする
  • 自分の体調に“優しくツッコミを入れる”

「今日は少し疲れているな」「春だから揺れるのも当然だ」と言葉にするだけで、心は落ち着きを取り戻します。
先生方の毎日は、本当に尊いものです。
だからこそ、自分のメンタルを整えることを「自己管理」ではなく「自分への敬意」として扱ってほしいのです。

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