多様な教育課題を乗り越える!生物・心理・社会モデル(BPSモデル)の組織的活用

学校現場で起こる問題は、もはや「一つの原因」で説明できる時代ではなくなりました。

不登校、いじめ、発達特性、家庭の困難──その背景には、からだ(生物的要因)、こころ(心理的要因)、そして人との関わり(社会的要因)が複雑に絡み合っています。
たとえば、「孤立しているAさん」という一つの事例でも、体調の問題、自己理解の課題、友人関係のズレなど、複数の側面から見なければ本質が見えてきません。

このような複雑な課題に対して、BPSモデル(Biological・Psychological・Social model=生物・心理・社会の統合的理解)が有効です。

これは医療や臨床心理学の分野で生まれた考え方ですが、今まさに学校組織にこそ必要な視点です。
多様な専門性をチームとして結びつけ、「子どもを全体として理解する」体制をつくることが、これからのインクルーシブ教育の基盤になります。

この記事では、BPSモデルを学校組織に活かす具体的な方法と、ミドルリーダーとして現場で実践できるステップを一緒に考えていきます。

1.Point:多様な課題に立ち向かうには、“ひとりで抱えない”BPSの視点が必要


子どもの課題を「性格」「家庭」「発達」など、一つの要因で片づけてしまうと、支援は狭まり、先生自身も追い詰められます。

今の学校には、生物・心理・社会の3つの視点(BPSモデル)で子どもを多角的に理解し、チームで対応する姿勢が不可欠です。

BPSモデルとは、子どもを「からだ(Biological)」「こころ(Psychological)」「つながり(Social)」の3側面から見る考え方。
どれか一つを強調するのではなく、3つのレンズで全体像を捉えることで、支援の糸口が見えてきます。

このモデルを組織的に活用することこそ、ミドルリーダーに求められる新しいリーダーシップです。

2.Reason:なぜ学校にはBPSの視点が欠かせないのか

近年、学校に寄せられる相談は年々複雑化しています。
「不登校」「暴力行為」「家庭の経済困難」「SNSトラブル」など、一見別々のように見える問題が、実は密接に絡み合っています。

例えば、孤立しているAさん。
担任は「友人関係の問題」と感じていましたが、保健室での面談では「朝起きられない」「食欲がない」といった身体面の不調が見つかりました。
さらに、スクールカウンセラーとの面談では「自分に自信がない」「居場所がない」といった心理的な要素が明らかになりました。
Aさんの支援には、友人関係の調整だけでなく、体調・心・環境の三方向からのアプローチが必要だったのです。

学校現場では、問題の“ラベル付け”が早く行われがちです。
「発達障害だから」「家庭が複雑だから」「性格の問題だろう」といった単一の見立てが、支援の幅を狭めてしまう。
けれどBPSモデルは、「どの側面からも影響し合う」という前提で子どもを理解する枠組みです。
それによって、先生方の“視野”が広がり、チーム全体で柔軟な支援が可能になります。

BPSモデルが教育現場で必要な理由は、大きく3つあります。

  • 多面的な視点が、誤解や偏見を減らす(子どもを一面だけで判断しない)
  • 複数の専門職と協働しやすくなる(共通言語として活用できる)
  • 先生自身の心理的負担が減る(「自分のせい」と思い込まなくなる)

つまり、BPSモデルは単なる理論ではなく、「先生を守り、チームを強くする組織ツール」でもあるのです。

3.Example:学校でのBPSモデル活用ステップ

では、学校でどのようにBPSモデルを活かしていけばよいのでしょうか。
ここでは、複数の学校での実践例をもとに、ミドルリーダーが組織として導入する4つのステップをご紹介します。

① チームで「3つの視点」を共有する

まず大切なのは、職員全体で「BPSモデルとは何か」を共通理解すること。
研修や校内研究の時間に、以下の3つの問いを全員で考えてみてください。

  • この子の「からだ」に何が起きているか(睡眠・栄養・体調など)
  • この子の「こころ」はどう感じているか(不安・自信・ストレス)
  • この子を取り巻く「人間関係・環境」はどうか(家庭・友人・SNSなど)

たったこれだけでも、会議のトーンが変わります。
「担任の問題」や「家庭の問題」ではなく、「チームで見る子どもの姿」が共有されるのです。

② 事例検討をBPSフレームで整理する

ケース会議で、議論が感情的になったり焦点がぼやけたりすることはありませんか?
そんなときに役立つのが、「B」「P」「S」の3つの軸で情報を整理する方法です。
たとえば、孤立しているAさんの場合:
 • B(生物):睡眠不足、偏食、朝の体調不良
 • P(心理):自尊感情の低下、失敗体験の蓄積、自己否定的思考
 • S(社会):友人関係のすれ違い、家庭の支援不足、SNSでの孤立
このように可視化することで、教職員・スクールカウンセラー・養護教諭・保護者が共通の土台で話し合えるようになります。
「どこを、誰が、どのように支援するか」が明確になり、行動につながるケース検討に変わります。

③ 校内チームの“専門性を結ぶ”仕組みをつくる

BPSモデルを活かすうえで重要なのは、「分野をまたいで協働する文化」をつくることです。

スクールカウンセラー、養護教諭、特別支援コーディネーター、学年主任など、関わる人の専門性を整理し、“連携の導線”を明確にしておくことがポイントです。

ある学校では、ミドルリーダーが中心となって「週1回のBPSミーティング」を実施しています。
それぞれが担当する事例を3側面で報告し、支援方針を共有するだけの15分。
短時間でも、「個人で抱えない文化」が根づいていきました。
このようなミーティングを継続することが、組織としての“心理的安全性”を高めます。

④ 保護者・地域・専門機関との「つなぎ役」になる

ミドルリーダーの重要な役割のひとつが、学校外の専門機関と校内をつなぐことです。
医療機関や福祉機関との連携では、BPSモデルが“共通言語”として機能します。
「この子は心理的には不安が強いが、社会的支援が不足している」など、的確な情報共有が可能になるからです。

チームで支える体制をつくると、先生方の負担が軽くなるだけでなく、保護者の安心感も格段に高まります。
「学校は子どもの全体を見てくれている」という信頼が生まれるのです。

4.Point:BPSモデルは、先生を孤立させない“組織の言語”

学校におけるBPSモデルの価値は、「子ども理解」だけではありません。
それは、先生を孤立させないための仕組みでもあります。

担任が抱え込まず、専門家と視点を分け合いながら支援できる。
その文化を支えるのが、ミドルリーダーのリーダーシップです。

BPSモデルを導入した学校では、職員室の雰囲気が変わります。
「この子の体調面はどう?」「心理的には落ち着いてる?」「家庭では支援できてる?」と、自然に3方向の質問が飛び交うようになる。
つまり、一人の先生の「思い込み」ではなく、チームの「構造的理解」で支援が回り始めるのです。

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