「実践共同体」を学校組織に!管理職が設計すべき学びの仕組み

「うちの学校は、同じ方向を向けていない気がする」「ベテランと若手で温度差がある」
──そんな声を、管理職や主任の先生から聞きます。
個々の先生がどれだけ熱心に授業改善や子ども理解に取り組んでも、組織としての学びの仕組みがなければ、その知見は点で終わってしまいます。
いま学校に求められているのは、「実践共同体(community of practice)」という考え方です。
これは教育学や組織学習の分野で用いられる概念で、「同じ課題に向かう仲間が、経験や知識を共有しながら実践を深める集団」を指します。
つまり、学校を“運営する場”ではなく、“学び合う場”として再設計することが、これからの教育力向上の鍵になります。
学校づくりと学級づくりはとても似ています。
子どもたちの成長を支えるのと同じように、先生方の学びを支える組織をどう設計するか。
この記事では、管理職が中心となって“実践共同体としての学校”をつくるための具体的な仕組みを考えていきます。
1.Point:学校を「実践共同体」として設計することが、教育力を底上げする鍵
優れた学校組織は、指示命令で動く集団ではなく、学び合う共同体(実践共同体)です。
実践共同体とは、同じ目的をもつ仲間が、互いの経験や知識を共有しながら専門性を高めていく集団のこと。
つまり、学校が「業務をこなす場」から「学びを生み出す場」へと変わることが、教育の質を持続的に高める条件になります。
そのためには、管理職が中心となって、先生方が安心して学び合える「仕組み」を意図的に設計することが欠かせません。
実践共同体を組織に根づかせることは、子どもたちの成長と同じく、先生の成長を支える学校づくりそのものです。
2.Reason:なぜ学校に「実践共同体」という考え方が必要なのか
学校では、教員一人ひとりが高い専門性をもっています。
しかし、忙しさの中で自分の実践を振り返る時間や、他者と学び合う機会が十分に確保されない現実があります。
結果として、知識やノウハウが「個人の中に留まる」構造ができあがってしまいます。
こうした状態では、学校の教育力は個々の力量に依存し、組織としての力が育ちません。
優れた実践があっても共有されず、若手が孤立し、同じ課題を各自で繰り返す。
それが多くの学校で見られる「再発型の課題サイクル」です。
組織学習の研究では、「人は人との関わりの中で成長する」と指摘されています。
この考え方を教育現場に応用したのが、実践共同体(Community of Practice)です。
同じ課題を持つ教師同士が経験を共有し、学びを言語化することで、暗黙知(経験からの感覚)を形式知(共有可能な知識)へ変えることができます。
ある学校では、管理職が中心となって「授業力向上チーム」を立ち上げました。
週に一度、授業映像をもとに3人から5人程度で対話し、気づきを共有するというシンプルな仕組み。
1年後には、校内研究発表で若手が自信をもって語り、互いの実践を「学校全体の財産」として扱うようになりました。
このように、学びが循環する構造を設計することが、教育力を持続的に育てるカギです。
3.Example:学校を実践共同体に変えるための3つの設計ステップ
実践共同体を学校に根づかせるには、情熱だけでは足りません。
「人が動き、学びが続く仕組み」を意識的に設計することが大切です。
ここでは、管理職やミドルリーダーが中心となって取り組むための、3つのステップを紹介します。
① 学びのテーマを「共有の問い」として設定する
実践共同体は、「同じ問い」をもつところから始まります。
たとえば、
- 「子どもの自己肯定感をどう高めるか」
- 「授業中に発言が少ない子をどう支えるか」
- 「学年で一貫した支援のあり方をどう整えるか」
こうした“共有の問い”を掲げることで、先生方の関心が一方向に向かいます。
重要なのは、「何を教えるか」ではなく、「何を一緒に探るか」という視点です。
校長・教頭がこの“問いづくり”をリードすると、学びの文化が自然に根づきます。
② 専門性を「教え合う文化」に変える
教員一人ひとりの専門性を生かすには、知識を教え合い・学び合う仕組みが必要です。
形式的な研修よりも、日常的に知恵を交換できる場づくりが効果的です。
たとえば、
- 放課後15分の「スモール共有会」
- 教科ごとのオンライン共有フォルダ(指導案・ワークシート・動画)
- “ペア実践制度”:異なる教科や学年の先生が互いの授業を見合う
このように、専門性を持ち寄る場があることで、「経験年数の差」ではなく「学びの多様性」として関係が再構築されます。
組織が“個人の知恵の倉庫”から、“知識の循環体”に変わる瞬間です。
③ 世話人(コーディネーター)を配置する
実践共同体が長く続くかどうかは、「世話人(ファシリテーター)」の存在にかかっています。
この役割は、学びの方向性を整え、対話を促す潤滑油のようなもの。
世話人の具体的な役割は以下の3つです。
- 会の目的と流れを明確にする(目的→話し合い→まとめ)
- 発言のバランスをとり、沈黙しているメンバーに声をかける
- 会で出た意見を記録し、次につなげる
ある中学校では、各教科に一人ずつ世話人を置き、月1回の「実践共有ミーティング」を継続。共有フォルダに議事録と資料を蓄積し、次年度の若手育成に生かしています。
これにより、「教員が育つ学校」という文化が徐々に浸透していきました。
4.Point:学校は“学ぶ組織”として進化できる
実践共同体としての学校をつくることは、「先生が先生を育てる仕組み」をつくることです。
組織がこの構造をもつと、個々の力量ではなく、学びの構造そのものが学校の力になります。
つまり、管理職の役割は「方針を出すこと」ではなく、「学びを設計すること」。
人材育成を“制度”から“文化”に変えていく視点が求められています。
学級経営が「信頼関係に基づく学び合い」で成り立つように、学校経営もまた「実践の共有」で成り立つのです。
まとめ:学び合う学校が、子どもを育てる
・学校を「業務の場」から「学びの場」へ変える
・共有の問い・教え合い・世話人の3要素で仕組みをつくる
・形式知と暗黙知を結び、先生の知恵を組織の財産にする
教育の未来を変えるのは、政策でも制度でもなく、現場で生まれる学びの循環です。
その出発点は、管理職が「学びのデザイン」に踏み出すこと。
わたしも、いつも道半ばです。
一緒に、“学び続ける学校”という実践共同体を育てていきましょう。

