学校現場で同僚との信頼関係を築くための心理的アプローチ

- 同じ学校にいても、同僚との距離を感じる
- 会話はあるけれど、信頼関係までは築けていない
- 教育観が違う人とどう関わればいいのかわからない
学校現場では、多様な価値観をもつ教員同士が協働することが求められています。しかし、教育観や指導方法に差があると、意見のすれ違いや不信感につながることも少なくありません。特に、ミドルリーダーや管理職といった立場になると、関係づくりに悩む機会も増えるでしょう。
私は長年、教育現場において多くの教員と関わってきました。ときには衝突もありましたが、「心理学的アプローチ」を使うことで、多くの関係性を修復・再構築することができました。
この記事では、価値観の違いを乗り越え、現場で信頼関係を築くための実践的な心理スキルを紹介します。「結局どうすればいいの?」が明確にわかり、日々のストレスが軽減されます。現場の空気を変えたい方は、ぜひ最後までお読みください。
Point
価値観の違う教員同士でも、「心理的安全性」を意識したコミュニケーションを実践すれば、信頼関係は築けます
学校という場は、協働を前提とした職場です。しかし、背景も考え方も異なる同僚と深い信頼関係を築くことは簡単ではありません。
そんな中で注目したいのが「心理的アプローチ」です。心理学をベースにした関わり方を意識すれば、共通点の少ない相手とも、安心して話し合える関係を築くことができます。
多くの教師が「なぜあの人とはうまくいかないのだろう」と悩んでいますが、実はその答えは相手にあるのではなく、自分のアプローチにあります。心理学の知見を活用すれば、これまで難しいと感じていた同僚との関係も、驚くほどスムーズに改善できるのです。まずは小さな変化から始めてみましょう。
Reason(なぜ必要なのか)
なぜ、心理的アプローチが必要なのでしょうか?その理由は、大きく分けて4つあります。
1. 学校は「価値観の交差点」
教師には、それぞれの専門性とともに信念・教育観・人生観があります。同じ学校に勤めていても、指導法や子どもとの接し方に対する考え方がまるで違うことは珍しくありません。
こうした違いは、放っておけば「ズレ」として表れます。
最初は「立場の違い」(管理職と一般教師など)や「考え方の違い」(厳格派と寄り添い派など)程度だったものが、時間がたつにつれて「あの人は合わない」といった「感情の対立」に発展してしまうのです。やがて、それが職場全体の「不信」や「ギスギスした雰囲気」につながる危険があります。
多様な価値観が日々交差し、ぶつかり合う学校現場だからこそ、交通整理となる心理的アプローチが有効なのです。
2. 感情は、論理より強く働く
人間は感情の生き物です。相手がどれほど論理的に話していても、「この人は私をわかっていない」と感じた時点で、関係性は冷えてしまいます。
信頼は、共感と安心から生まれます。つまり、感情の通い合いこそが信頼のベースになるのです。
3. リーダーほど「近づきにくい存在」になりやすい
もしあなたが主任や管理職といったリーダー的立場であれば,「指導する側」「評価する側」というイメージを持たれやすく、周囲との距離が生まれがちです。
リーダーであるからこそ、意識的に「話しやすさ」「温かさ」を発信しないと、信頼の土台は築けません。
4. 信頼は「築く」ものではなく、「育てる」もの
信頼は一度の会話で生まれるものではありません。日々の積み重ね、小さなやりとりの一つひとつの中で、「この人は安心できる存在だ」と思われるような行動を取り続けることが必要です。
心理的アプローチは、この日々の関わり方に力を与えてくれます。
Example(具体例な方法)
それでは、具体的にどのようなアプローチが有効なのでしょうか。以下に、信頼関係を築くための5つの心理的スキルをご紹介します。
1. (基本的傾聴としての)要約・言い換え
相手の話をそのまま受け取るのではなく、要約したり、言い換えたりして返す聞き方です。
例:
「最近、子どもたちが落ち着かなくて困ってるんですよ」
→「授業中も集中できない様子が続いてるということですね?」
この「要約・言い換え」によって、相手は「ちゃんと聞いてくれている」「理解されている」と感じます。そこに、安心感が生まれ、信頼が芽生えます。
2. 感情の反映(言語化)
相手が直接言っていない感情を、こちらから言語化して伝える技術です。
例:
「放課後、部活指導もあってクタクタで…」
→「それは相当プレッシャーがかかっている状況ですね」
この一言があるだけで、相手は「わかってもらえた」と感じるようになります。感情を汲み取る姿勢は、信頼関係の土台となります。
3. 否定しないリアクション
意見が違っても、即座に否定しない。これが関係性維持のカギです。
例:
「私は宿題は出さない派です」
→「そういう考え方もありますね。ちなみに、どんな理由があるんですか?」
対立を回避するために意見を曲げる必要はありませんが、まずは相手の立場を尊重する姿勢を見せることが重要です。
4. 感謝と称賛の具体化
「ありがとう」「助かります」といった言葉は魔法のような力を持ちます。さらにそれを具体的に伝えることで、相手の自己効力感を高め、関係を良好に保つことができます。
例:
「昨日の対応、本当に助かりました。保護者からの信頼も増したと思います」
小さな感謝を言葉にする。これを意識するだけで、職場の空気は変わります。
5. 相手の「強み」に目を向ける
つい「課題」や「欠点」ばかりに目が行きがちですが、信頼関係を築くためには、相手の強みを見つけて承認することが効果的です。
例:
「あなたの授業は、子どもたちがすごく楽しそうにしていますね」
こうした言葉は、相手のモチベーションを引き出すだけでなく、あなたの信頼度も上げます。
応用:相手の「価値観」を探る
表面的な言葉のやりとりだけでは、深い信頼関係にはなりません。もしもう一歩踏み込むことができるなら、「相手の価値観」に焦点を当てることが効果的です。ただし、ある程度、良好な関係を築いた後で行いましょう。
たとえば、
- どんな教師を目指しているのか
- 教育の中で何を大切にしているのか
- 将来、どんなことをしたいのか
こうした「内なる信念」を知ることで、たとえ方法が違っても、「この人も子どものために頑張っている」と理解できるようになります。
聞き方のコツとしては、「あなたは、どう思いますか?」と尋ねた後に、そのゆみを回答に興味を持ち、相手を応援する気持ちで「なぜそう思ったのか」までを聞き出すことです。
Point(結論)
信頼関係を築くために必要なのは、共通の価値観ではありません。違いがあることを前提に、「安心して関われる場」をつくることです。
そのためには、心理的なアプローチが非常に有効です。話し方、聴き方、受け止め方を少し変えるだけで、相手の心は開かれていきます。
同僚と良好な関係を築くために必要なのは、相手を変えることではなく、まず自分の関わり方を変える勇気です。
今日からでも実践できることは、相手の話を最後まで聞き、感情を受け止めることです。完璧である必要はありません。「この人は私を理解しようとしてくれている」と相手に感じてもらえれば、それが信頼の第一歩となります。
職場の雰囲気が変わる瞬間を、ぜひ体験してください。
【まとめ】信頼は与えることから始まる
この記事では、学校現場で同僚との信頼関係を築くための心理的アプローチとして、以下のことをお伝えしました。
- 信頼関係は「感情」と「安心感」から生まれる
- 「心理的安全性」を高める関わりが重要
- 要約・言い換え、感情の反映、感謝の具体化などのスキルが効果的
- 相手の価値観に目を向けることで、対立ではなく理解が生まれる
最後に一つだけ。
信頼は、与えることから始まります。
まずは、自分の関わり方を少しだけ変えてみる。
その一歩が、職員室の空気を変え、子どもたちにとっても温かな学びの場をつくることにつながります。