主任になったけど、大丈夫かな？担任教師（プレイヤー）から主任（プレイングマネージャー）へのキャリア転換

主任の仕事は「自分が動く」から「人を動かす」に変わる

主任（学年主任、教科主任、校務分掌の主任など）に任命されたとき、多くの人が「これまでの頑張りが認められた」と感じる一方、「自分に管理的な仕事が務まるのだろうか」と不安を抱きます。

その不安の正体は、「現場としてプレイヤー」としての視点から、「マネージャー」の役割も付与される「プレイングマネージャー」としての視点への切り替えができていないことにあります。

主任になった今こそ、「自分が動く」から「人を動かす」仕事に転換する必要があります。

プレイヤーとしての優秀さだけでは、チーム全体の成果を生み出すことはできません。

主任の役割は、プレイヤーとは異なる視点が求められる

主任の役割は、以下のように非常に多岐にわたります。

• チーム全体のパフォーマンスの最大化
• 若手教員・同僚教員の育成とサポート
• 校内の意見調整と管理職への提案
• 学年・学級経営のマネジメント
• 他部門や保護者との橋渡し

つまり「板挟みになる立場」に意図的に置かれているのが主任という存在です。

現場の一員として直接動きつつ、同時に現場全体を見渡し、調整・育成・提案まで求められるという、“二重の視点”を持たなければならないのです。

また、主任として直面する問題には、正解のないグレーゾーンの判断が求められる場面も少なくありません。

たとえば、「どこまで指導に介入すべきか」「管理職の方針と現場の実情、どちらを優先するか」といった、白黒つけづらい問題（あるいはどっちでもいいと思える問題）に悩むことも多くあります。

答えの出ない問いを抱えながら、それでも日々判断を下し続けなければならない。そのこと自体が、主任という役割の重さであり、孤独さでもあるのです。

しかもこの時期は、年齢的にも子育てや親の介護、健康不安など、プライベートでの変化も重なりやすい時期です。

仕事に使える時間やエネルギーが、以前ほど自由ではなくなっていることも少なくありません。

このような複雑な状況下で主任として機能するためには、「何でも自分でやる」から「他者に任せ、支える」という視点へと意識を切り替えることが不可欠なのです。

事例：自分がやるより「一緒にやる」ことで見えてきた変化

ある中学校の学年主任であるBさんは、かつて非常に熱心な理科の教師でした。

授業改善に積極的で、子どもたちからの信頼も厚く、校内でも「頼れる先生」として知られていました。主任に任命された当初、Bさんは「自分で全部やった方が早い」と考え、他の教員に任せることをためらっていました。

しかしあるとき、学年内の行事準備でメンバーの動きが鈍く、全体の進行が停滞してしまいました。

その際、彼はある失敗を経験します。すべてを自分一人で引き受けた結果、準備が間に合わず、当日も疲労困憊。行事の後、同僚から「主任が頑張っているのはわかるのですが、私たちはどうすればいいかわかりません」と言われたのです。

そこでBさんは、次のプロジェクトから「自分がやる」のではなく「一緒にやる」「見守る」「任せる」ことにチャレンジしました。初めはうまくいかず、「やっぱり自分がやった方がいい」と思いかけましたが、同じ学年の先生たちが失敗を乗り越え、自分の頭で考え、行動するようになったことで、チームとしての動きが格段に良くなったそうです。

このように、主任の仕事は「人を育て、任せる」ことで、チームの可能性を引き出すことにあります。

それは時間もかかり、非効率に見えるかもしれませんが、長期的には主任自身が楽になり、周囲の信頼も深まるという副産物をもたらします。

主任は“育てる仕事”。自分の視点を変えれば、組織も変わる

主任という立場は、単なる「中堅職」ではなく、組織の要です。

プレイヤーとしての現場で働きながらも、これまでの経験を生かし、後進を育て、組織を整え、管理職との橋渡しをすることで、学校全体の質を高めていく重要なポジションです。

最初は不安や戸惑いがあって当然です。でも、自分だけで頑張らなくてもいいのです。

「自分が動く」ではなく、「人を動かす（動いてもらう）」「関係を育てる」仕事に取り組むことこそが、主任としての役割なのです。それは「教えてやろう」という上からの働きかけではなく、「助けてもらおう」「感謝しよう」という意識から始まります。

あなたが主任として迷っているなら、それは成長の入り口です。

プレイヤーとしての力に、マネージャーとしての視点が加われば、あなたの教育力はもっと大きな影響を生み出せるようになります。