教師が『もう限界』と感じたときにやるべき3つのこと

- 朝、職員室に向かう足取りが重い
- 授業や生徒対応に全くやりがいを感じない
- 家に帰っても仕事のことが頭から離れない
- 誰にもこの辛さを相談できず、孤立感が深まっている
そんなふうに、「もう限界かもしれない」と思ったことはありませんか。
教育現場はとても密度の高い仕事環境です。責任感の強い先生ほど、自分を追い詰めてしまうことも多いもの。ですが、そのままの状態を放置すれば、心身の健康に重大な影響を及ぼしかねません。
私は臨床心理士の資格をもつ教師として長年、学校現場で働き、現在は大学で教員養成に携わっています。現場での体験と臨床心理学の知識を活かし、多くの先生方に対してカウンセリングやコーチングを行っており、多くの先生方がバーンアウトの危機を乗り越える過程に立ち会ってきました。
この記事では、「当たり前の励まし」ではなく、臨床心理学と現場の知恵に基づいた「今すぐやるべき3つのこと」を提案します。
この記事を読むことで、まずは「今の自分をどう扱えばいいか」がわかり、状況に流されるだけでなく、自分のペースで道を探せるようになるはずです。
あなたが次の一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。
Point:「限界だ」と感じたときこそ、3つの行動で自分を守ろう
もう限界」と感じたとき、まず必要なのは「行動の優先順位」を整理することです。
感情に流されてしまうと、焦りや自己否定ばかりが強まり、余計に状況が悪化してしまいます。
そんなときこそ、自分を守るための「小さな行動」から始めましょう。
ここでは、教師として限界を感じたときにやるべき3つの具体的な行動を紹介します。
Reason(理由・背景):教師の仕事は燃え尽きやすい。だからこそ早めのケアが必要
教師という仕事は、「感情労働」の要素が非常に強い仕事です。
授業準備、保護者対応、同僚との関係調整、評価業務……。
さらに、子どもの人生に関わるという重みがあります。
責任感が強くまじめな先生ほど、「自分が頑張らなければ」と無理をしてしまう傾向があります。
しかし、そのような状態が続くと、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高まります。
バーンアウトは一度発症すると回復までに長い時間が必要です。
だからこそ、「限界だ」と気づいた時点で適切な行動を取ることが非常に重要なのです。
Example(具体例・方法など):優先すべき3つの行動
① まずは「身体」を守る
心のケアは大事ですが、まずは身体の安全確保が最優先です。 十分に睡眠を取れているか、食事はまともに取れているか、体調不良を我慢していないかを確認しましょう。この中でも特に睡眠は重要です。
もし明らかに無理をしている場合は、病休・休職も選択肢に入れてください。 一時的に離れることは「逃げ」ではありません。自分を守る大切な行動です。心療内科はなかなか予約がとれない場合もあるので、眠れないと感じたら予防の意味でも早めの受診をお勧めします。
事例:小学校3年目のA先生は、毎日夜中2時まで教材研究をし、朝6時には起床という生活を続けていました。「子どもたちのためには1日たりとも休めない」と思い込み、体調不良でも解熱剤を飲んで出勤する日々。しかし、ある日授業中に立ちくらみで倒れ、結果的に3ヶ月の休職となってしまいました。一方、同じく疲労を感じていたB先生は、めまいや食欲不振の症状が続いた時点で医師に相談し、診断書をもらって2週間の休養を取りました。復帰後、「あの時休んだおかげで、今は子どもたちの笑顔を心から楽しめる自分でいられる」と振り返っています。
② 「1人で抱えない」場をつくる
悩みや限界感を1人で抱えると悪循環に陥ります。
気持ちが言語化されず、頭の中でグルグル思考が加速してしまうからです。
話せる同僚、信頼できる友人、家族、または外部の相談窓口(スクールカウンセラー、教育センターなど)を活用しましょう。
事例:中学校で10年目を迎えるC先生は、学級経営がうまくいかず「きっと自分が教師に向いていないんだ」と自分を責め続けていました。「同僚に弱音を吐くのは情けない」「管理職には相談しづらい」と思い詰める日々でしたが、友人の紹介で教育カウンセラーと面談する機会を得ました。初回は緊張していたC先生でしたが、「そんな大変な中でも毎日子どもたちのことを考えているんですね」という言葉に涙があふれました。「自分の気持ちをこんなふうに話してもいいんだ、受け止めてもらえるんだ」と気づいたことで、問題への向き合い方が大きく変わり、その後は学年主任にも相談できるようになったそうです。
③ 「続ける」「辞める」を今は決めなくていい
限界を感じているときは、思考が極端になりがちです。
「もう辞めるしかない」と短絡的な判断に走るのは避けましょう。
まずは「今は自分の心身を整えることが最優先」と割り切ってください。
続ける/辞めるの判断は、心が少し整ったあとでじっくり行えばよいのです。
事例:高校で15年間勤務するD先生は、部活動指導と進路指導の重圧で「もう教師を辞めるしかない」と退職願を書くまでに追い詰められていました。しかし、家族に相談したところ「まずは体調を整えてから考えよう」と提案され、1ヶ月間の病気休暇を取得しました。休職中は散歩をしたり、久しぶりに読書を楽しんだりする時間を過ごしました。復帰前の面談では「疲れ切った状態で見ていた学校と、少し元気になった今見る学校では、こんなにも印象が違うんですね。生徒たちの成長する姿がまた愛おしく感じられます」と話し、現在も教壇に立ち続けています。
Point:「もう限界」と感じたときこそ、自分を守る行動が最優先です。
まずは身体の安全を確保すること。無理に働き続けるのではなく、必要なら休む勇気を持ってください。
次に、1人で抱え込まず誰かに話すこと。話すことで気持ちが整理され、状況を客観的に見られるようになります。
そして、「続ける」「辞める」といった進退の判断は、今は決めなくてかまいません。心身が整ってから改めて考える方が、後悔のない選択につながります。
今は「もっと頑張らなきゃ」と思うより、「自分を大切にすること」が何よりも大事です。この3つのステップを意識して、まずは一歩を踏み出しましょう。
まとめ
もし今、あなたが限界を感じているなら、まずは誰かに一言相談してみてください。
たった一言でも、思考の流れが変わるきっかけになります。
また、自分の状況を見つめ直すメモや日記を書くのもおすすめです。
頭の中の「もやもや」を少しでも外に出すことで、整理が始まります。
そして何より、「この状態は一生続くわけではない」と知ってください。
一歩ずつ整えていくことが、次の可能性への扉を開きます。