「プレイングマネージャー」の重圧から抜け出そう。「管理する人」から「つなぐ人」への転換

皆様,こんにちは。
本連載もいよいよ大詰め,第19回となりました。
現場の最前線で自身の業務(プレイ)をこなしながら,部下の育成やチームの目標達成(マネジメント)も担う「プレイングマネージャー」の皆様。日々,あふれるタスクに追われ,
「自分がもう一人いれば」
「どうして部下はもっと自発的に動いてくれないのか」
と,一人で重圧を抱え込んでいないでしょうか。
今回は,そんな限界に近づいているマネージャーの皆様へ,肩の荷を少し下ろし,チームも自分も立て直すための「リーダーの新しい役割」についてお話しします。
1.プレイングマネージャーは「管理する人」より「つなぐ人」を目指した方がよい
結論から申し上げます。
変化が激しく,課題が複雑化した環境において,リーダーが部下一人ひとりの行動やモチベーションをすべて把握し,正解を与え続けるマネジメントには限界があります。
とくにプレイングマネージャーが,自分自身の成果を出しながら,メンバー全員の状態を常時コントロールしようとすることは,現実にはかなり難しいと言わざるを得ません。
だからこそ,これからのリーダーが目指すべきは,トップダウンで「管理する人」であり続けることではなく,メンバー同士,あるいは外部の知見や支援資源とメンバーを「つなぐ人」へと役割を転換することです。
自分が全部背負うリーダーほど,短期的には回っているように見えても,長期的には持続しにくい。
まず,この現実を認めることが出発点です。
2.一人の完璧な管理より,リーダーシップの共有の方がチームは機能しやすい
なぜ,リーダーが一人で抱え込み,管理を強めるほど,かえってチームはうまくいかなくなるのでしょうか。
この点を考えるうえで参考になるのが,シェアード・リーダーシップ(shared leadership)の考え方です。
ピアース & コンジ(2003)は,リーダーシップを特定の一人が発揮するものではなく,チームのなかで影響力が分かち持たれるプロセスとして捉えました(Pearce and Conger,2003)。
さらに,カーソンらは,チーム内で共有された目的や相互支援,発言しやすい雰囲気が整うことで,シェアード・リーダーシップが成立しやすくなることを示しています(Carson et al.,2007)。
加えて,ワンらのメタ分析でも,シェアード・リーダーシップはチーム有効性と正の関連を持つことが報告されています(Wang et al.,2014)。
つまり,一人の上司が全部決めて全部支える方が強いのではなく,必要な場面でメンバーそれぞれがリーダーシップを発揮できる方が,チームとしては機能しやすいのです。
反対に,プレイングマネージャーが「自分が全部把握しなければ」「自分が正解を出さなければ」と管理を強めるほど,
メンバーは「指示を待てばよい」「最後は上司が責任を取ってくれる」と学習しやすくなります。
その結果,リーダーの責任感が強いほど,皮肉にもメンバーの自律性や当事者意識が育ちにくくなるのです。
3.一人で背負うほど,人も組織も疲弊しやすい
私がキャリア支援や教育の現場で見てきたのは,まさにこの「一人で背負う」ことの難しさです。
ある優秀なプレイングマネージャーは,「部下のミスは自分の責任だ」と考え,毎晩遅くまで部下の資料を細かくチェックし,修正し,手取り足取り支えていました。
短期的には仕事の質が保たれているように見えますが,次第に部下は「どうせ最後は上司が直してくれる」と受け止め,当事者意識を持ちにくくなっていきました。
一方で,マネージャー自身は疲労を蓄積させ,チーム全体としても自走しにくい状態になっていきました。
この構造は,学校現場でもしばしば見られます。
責任感の強い教師ほど,
「自分の学級のことは,自分がすべて何とかしなければならない」
と思い詰めやすいものです。
たとえば,不登校傾向のある生徒に対しても,担任が一人で抱え込み,毎日の対応を自分だけで引き受けようとすると,教師自身が疲弊しやすくなります。
しかし実際には,生徒を支える資源は担任一人だけではありません。
スクールカウンセラー,養護教諭,管理職,学年団,保護者,場合によっては友人関係も含めて,多様な支援資源があります。
本当に有効なのは,教師がすべてを管理しきろうとすることではなく,その子に必要な人や場とつなぐことです。
一人の管理者がすべてを抱える構図から,支援のネットワークで支える構図へ切り替えることが,結果として本人の安心にも,組織の持続性にもつながります。
4.変えるべきなのは相手ではなく,リーダー自身の「かかわり方」
では,プレイングマネージャーは具体的に何を変えればよいのでしょうか。
大事なのは,相手をコントロールしようとしすぎないことです。
私たちにできるのは,相手そのものを思い通りに変えることではなく,リーダーである私たちの「かかわり方を少し変えること」です。
たとえば,部下から質問されたとき,毎回完璧な正解を返そうとしなくてよいのです。
「その分野は,私より〇〇部の人の方が詳しい。一緒に聞きに行こう」
「そのテーマは,△△さんが得意だから相談してみるといい」
と,人や知見をつなぐことに徹する。
これだけでも,リーダーの役割は大きく変わります。
リーダーが全部を抱え込むのではなく,メンバーそれぞれの違いや強みを頼り,互いに結びつける。
単一の正解に合わせることよりも,多様なリソースが網の目のように交差する組織を設計する。
その発想が,包摂的で持続可能なチームづくりにつながります。
「管理する人」から「つなぐ人」へ。
この役割転換こそが,プレイングマネージャー自身を重圧から少し解放し,メンバーの自律性を引き出す現実的な一歩になるのです。
いよいよ次回は最終回です。これまでの連載の総まとめとして,孤立しない職場づくりの本質と,人が回復し成長する組織の未来について考えていきます。
引用文献
- Carson, J. B., Tesluk, P. E., & Marrone, J. A. (2007). Shared leadership in teams: An investigation of antecedent conditions and performance. Academy of Management Journal, 50(5), 1217–1234.
- Pearce, C. L., & Conger, J. A. (Eds.). (2003). Shared leadership: Reframing the hows and whys of leadership. Sage Publications.
- Wang, D., Waldman, D. A., & Zhang, Z. (2014). A meta-analysis of shared leadership and team effectiveness. Journal of Applied Psychology, 99(2), 181–198.

